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活字人間のどこが悪い!
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■私の好きな作家(2):池波正太郎
私が時代小説にのめり込んでいったのは、何故だろう。
そのわけを自分なりに考えてみると、武家社会でのストーリー性にもあるが、やはり最大の理由は現代人が忘れかけている(いやすでに過去の遺物として葬り去れているといった方がいい)細やかな思いやり、礼節、自己犠牲といった日本人ならではの美徳を垣間見るからだと思う。
池波ファンの必携本!?
「江戸古地図散歩−回想の下町・山手懐旧」
池波正太郎著 平凡社江戸を愛した池波正太郎が、古地図を手に軽やかなエッセイで時代劇の舞台を甦らせる魅力的な一冊です。
池波正太郎は、その日本人としてのアイデンティティを江戸という時代の中で鮮やかに描ききっている。また人間の心には、正と悪がない交ぜに存在しており、どちらか一方だけがすべてを支配しているわけではないことも、折に触れ語り続けている。主人公の長谷川平蔵、秋山小兵衛、藤枝梅安からしてそうである。無類の正義漢を発揮する反面、平蔵は若い頃に放蕩の限りを尽くし、小兵衛は本人も自覚している女性好き(嫌いな人はいないと思うが・・・)、梅安に至っては殺し屋といった具合である。ただひとつ言えることは、彼らは総じて社会的弱者へのいたわりとやさしさを忘れないことである。同時に権力をかさに悪事を働く者、善良な人を殺める者に対しては容赦のない行動に出る。この痛快さこそが池波正太郎の魅力であり、真骨頂であると思う。ここでは、私の人気度ナンバー1(どちらも1位です)である、鬼平犯科帳と剣客商売について語りたいと思います。
言うまでもなく、長谷川平蔵は火付盗賊改方の長官である。彼の魅力は大滝の五郎蔵、相模の彦十、おまさといった、いわゆる密偵役の人間に対して見せる、気づかいや愛情である。盗賊たちからは鬼平と恐れられる反面、少しも偉ぶらず、町人たちには、べらんめえ調で語りかける。その人情味あふれる庶民的人柄が、読む人の心を熱くするのだと思う。密偵さらには部下である与力や同心たちを使って、傘山の弥兵衛、狐火の勇五郎、くちなわの平十郎等の極悪非道な盗賊たちを相手に、虚虚実実の大捕り物を演じるストーリー展開は実にドラマチックである。
ちょっと蛇足だが、現代版火盗改といえば内容的にちょっと強引な気もしないではないが、ワタクシ的には東京地検特捜部をイメージしてしまう。ちなみに現在の東京地検特捜部を率いるのは、大分県出身の大鶴基成部長である。我々と同じ郷土出身なのだから、これは誇りにしても良い。その方のメッセージが法務省のホームページで紹介されている。その一部を紹介すると、「額(ひたい)に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならない」とある。ほら、長谷川平蔵の台詞にしてもおかしくない内容でしょう。
藤田まこと主演のテレビ時代劇の剣客商売を始めて見た時、ウーン何か違うと感じたのは私だけでしょうか?演技力のある藤田さんですから、それはそれでいい味を出しているのですが、小説の秋山小兵衛は小柄な初老の剣客で、存在感がありながらも、平時は飄々としている人物をイメージしていた自分には、何か別の剣客を見ているようで仕方ありませんでした。秋山小兵衛の生き方そのものに共感を覚える私にとって、思い入れが強すぎるのかも知れません。超一流の剣客でありながら名誉や地位を望まず、ただただ親子ほど歳の離れた恋女房おはるとの静かな暮らしの中に身をゆだねる・・・。これは池波正太郎が理想とする生き方ではなかったのか、そう思えてなりません。
小兵衛自身の口から、「ほとほと女好きで困ったものよ」などと嘆息する様は、まことに人間味あふれています。また恋女房おはるのキャラクター設定が実にすばらしい。とにかく天真爛漫であり、女性特有の逞しさもある。シリーズを通じて、さわやかな土の香りがする魅力的な女性として描かれています。我々中高年のおじさんにしてみれば、本当にうらやましいかぎり。さらに、日頃は好々爺の小兵衛もひとたび真剣を手にすれば、剣鬼と化すそのギャップも見せ場のひとつ。男としての本当の強さとは何か?読むたびに、このことについて教えられる時代小説です。
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