

この新書を読む気になったのにはふたつの理由がある。ひとつはタイトルにあるように、「きちんと生きてる人」というフレーズ。自分の60年間を振り返ると、きちんと生きてきたとは恥ずかしながら口がさけても言えない。
どちらかと言えば、場当たり的かつドロ縄式の人生であったように思える。さらにそのサブタイトルにある「愚直」という言葉も気になった。こちらは、自慢じゃないが自分にも当てはまる。つまり愚直でだらしなく生きてきた男こそまぎれもなく私なのである。
しかし、自分をかばう訳ではないが、大多数の人がそのように思っているのではないか?自分は誰よりも聡明できちんと生きてきたと断言する御仁には、いまだお目にかかったことがない。そうありたいと日々努力している方々は多いと思うが・・・。
表紙カバーに、ちょっと衝撃的な文章が書き込まれている。紹介すると、「人に温い人、自分に厳しい人、人や物事に対して謙虚で、礼儀正しい人、そして損得のモノサシだけで生きない人…こんな人を他人は放っておかない。」とある。
読後に感じたことだが、この本で著者が伝えたかったのは、まさにこの4行から構成される文章であると確信した。 しかし現代社会にあって、こんな生き方をすること自体、非常に困難であるように思われる。若い人はもちろんのこと、年老いた人にも、これとは逆の不遜で非常識きわまりない人をよく見かけるのは私だけだろうか。
しかし、しかしである。自分の限られた知人、友人の中にも確かに他人が放っておかないような魅力的な人間が4人ほどいた。世代も業種も異なるそれらの人たちに共通しているのは、とにかくおだやかで、親身になって相手の言葉に耳を傾け、立場を越えて適切なアドバイスをしてくれることだった。
その4人の内、2人は自分で会社を興し、後の2人は創業者に認められ社長にまで上り詰めた。もちろんその会社は今も立派に存在している。
著者のプロフィールについて少しふれておきたい。40有余年を自動車業界で過ごす。最初の30年は自動車メーカーで、次の10年間は販売会社の社長を勤めた方である。
その40年間に出会った上司や部下、さらには得意先の社長や友人のエピソードを中心に話しは展開していく。もちろんその根幹には、人間性という重要なテーマが横たわっている。こう書くと、何かかた苦しいように思われそうだが、決してそんなことはなく、身近な出来事を題材にした気楽に読める内容である。
つまり、座布団を枕代わりに寝転がって読める本であるということである。また、分かりやすい人生の手引書であるとともに、一流の営業マンになるためのバイブルとしても最適な一冊であることは間違いない。
今年、還暦を迎えた私ですが、この本を読み終えた時には何か心のカサブタが一枚抜け落ちたような爽快な気分になった。これまで漠然と感じてきたことを再認識したり、時には素直に反省させられる点も多くあった。
マスコミをはじめ世間では生涯学習の大切さが声高に叫ばれているが、それはさておき人間としての生き方を学び実践することは、年齢に関係なく最優先されるべきテーマだと信じる。
またそのことが尊敬されるオジサン、さらには慕われるオジイチャンになれる唯一の道であると思えてしかたがない。
以上のことから、中高年の方も「何をいまさら」などと考えず、この新書を手にし、ご一読することを心からお勧めしたい。